脊髄小脳変性症の食事と栄養|症状進行を遅らせる食生活のポイント

「最近、少し飲み込みにくさを感じるようになった」 「脊髄小脳変性症(SCD)に良い食べ物はあるのだろうか?」
脊髄小脳変性症と診断された患者さんやご家族にとって、日々の食事は楽しみであると同時に、進行への不安や誤嚥(ごえん)のリスクがつきまとう切実な問題です。
実は、適切な栄養管理と食事の工夫は、単なる栄養補給以上の意味を持ちます。それは、神経細胞を守り、筋肉の機能を維持し、生活の質(QOL)を保つための「立派な治療」の一つなのです。
今回は、専門的な知見に基づき、症状の進行を遅らせるための栄養素や、安全に食事を楽しむためのポイントを詳しく解説します。
1. 進行を遅らせるために意識したい「栄養の力」
脊髄小脳変性症の中には、特定の栄養素が深く関わっているケースがあります。
ビタミンEと抗酸化作用の重要性
遺伝性SCDの一部には、体内のビタミンEを運ぶ力が弱いために起こるタイプがあります。この場合、適切な量のビタミンEを補給することで、症状の改善や進行の停止が期待できることが分かっています。 また、多くのSCDでは「酸化ストレス」が神経にダメージを与えます。コエンザイムQ10やビタミンEといった抗酸化作用のある成分を意識することは、神経細胞のエネルギー源であるミトコンドリアを保護し、機能を維持する助けになります。
ビタミンB群(チアミン)の関与
研究報告では、小脳の萎縮に伴って脳内のビタミンB1(チアミン)が減少しているケースも指摘されています。神経系のエネルギー代謝をスムーズにするために、ビタミンB群を不足させない食生活が推奨されます。
2. 嚥下(飲み込み)障害に備える「食形態」の工夫
病状が進むと、舌や喉の筋肉の連携がうまくいかず、むせ込みやすくなります。誤嚥性肺炎を防ぐために、以下の点に注意しましょう。
- 避けるべき食品(危険なもの)
- パサパサしたパン、サラサラしたお茶、ベトベトした餅などは喉に残りやすく危険です。
- 特に**「具入りの汁物(味噌汁など)」**は、液体と固形物が混ざっているため、飲み込むスピードの調整が難しく、最も誤嚥しやすい食品です。
- 麺類を「すする」動作は、SCD特有の勢いがつきすぎる動き(測定過大)を招き、気管に入りやすいため注意が必要です。
- 推奨される工夫
- 刻み食には「あんかけ」などでとろみをつけ、バラバラにならないようにまとめます。
- 水分には市販のとろみ剤を使用し、ゆっくり喉を通過するように調整しましょう。
- 栄養不足(低栄養)を防ぐため、少量で高カロリーなプリン、アイスクリーム、卵豆腐などを間食に取り入れるのも効果的です。
3. 誤嚥を防ぐ「食べ方」と「姿勢」のコツ
「何を食べるか」と同じくらい「どう食べるか」が重要です。
顎(あご)を引いた姿勢が基本
顎が上がると気道が開いてしまい、誤嚥しやすくなります。頭の後ろにクッションを入れ、顎を軽く引いた姿勢で食べるのが理想です。
喉に残さない「複数回嚥下」と「交互嚥下」
飲み込んだ後、もう一度「空飲み込み」をしてみてください(複数回嚥下)。喉に残った食べ物をきれいに流し込めます。また、パサつくものの後にゼリーを食べる(交互嚥下)ことも、残留物を流すのに有効です。
4. 食事と「鍼灸・リハビリ」の相乗効果
食事の効果をさらに高めるのが、お口の周りのコンディション作りです。
食べる前の「嚥下体操」
食事の前に2〜3分、首や肩を回したり、頬を膨らませたりする「嚥下体操」を行いましょう。首周りの過剰な緊張が鍼治療や体操で和らぐと、飲み込みは格段にスムーズになります。
鍼灸治療の役割
当院では、鍼治療によって喉の周りや首の筋肉の緊張を緩和し、嚥下に関わる神経の働きをサポートしています。首のコリが取れることで、「食事が飲み込みやすくなった」と喜ばれる患者さんは非常に多いです。
まとめ
脊髄小脳変性症における食事療法は、栄養を摂るだけでなく、誤嚥を防ぎ、神経を保護するための大切な戦略です。
当院では、サーモグラフィで血流を確認し、エコーで首の筋肉の状態を診ながら、嚥下機能を高めるための専門的な鍼治療を行っています。栄養管理と鍼治療、そしてリハビリを組み合わせることで、美味しく食べられる時間を一日でも長く守っていきましょう。
脊髄小脳変性症の鍼灸外来
一般的な鍼灸院では行わない「体の状態を客観的に捉える方法」です。
足部の温度変化を確認する検査の一例
「診断はついた。けれど、今の自分の状態がどうなのかは、よくわからない」
「薬を続ける以外に、何を意識すればいいのか、誰も教えてくれなかった」
私たちは、こうした行き場のない不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、サーモグラフィで全身の体温分布を可視化します。
脊髄小脳変性症の方では、
ご本人が感じている歩きにくさやふらつきと一致する形で、
手足の温度分布に左右差が見られることがあります。
その一致を一緒に確認することで、
「なぜ今の動きにくさが出ているのか」を整理する手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
参考文献
- 『脊髄小脳変性症マニュアル 決定版!』 西澤正豊 監修(日本プランニングセンター)
- 『脊髄小脳変性症のリハビリテーション』 (Monthly Book Medical Rehabilitation No.93) 菅田忠夫 編集(全日本病院出版会)
- 『脊髄小脳変性症の臨床』 阿部康二 編集(新興医学出版社)
- 『鍼灸臨床最新科学 メカニズムとエビデンス』 医歯薬出版株式会社
- 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018』 南江堂
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当院について
森上鍼灸整骨院
院長 吉池 弘明
森上鍼灸治療では、西洋医学の代替医療として鍼灸治療に取り組んでいます。 顔面神経麻痺や突発性難聴の患者様には、臨床経験20年以上の鍼灸師がチームを組んで治療にあたります。
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